「アニマルセラピー」の歴史(1)
「アニマルセラピー」の歴史は古く、古代ローマの帝国時代までさかのぼります。
そこでは「乗馬療法」という療養が行われていました。
戦場で傷ついた兵士たちのリハビリに馬が用いられ、馬の世話をすることで心の安定を保つことを期待したものと思われます。
また、1875年のパリでは、麻痺を伴う神経障害患者に有効な療法が「乗馬」であると報告されています。
それ以降、乗馬は「治療のひとつ」として認められ、現在では、確実に治療に効果があるものとして、世界各国の医療の現場で、その療法が組み込まれています。
日本でも、身体的障害を患う人たちのリハビリの場として「日本乗馬療法協会」などが活動を推奨しています。
1792年には、イギリスに設立された精神患者を収容する施設に変化が表れました。
それまで当たり前のように使われていた拘束具の使用を止め、副作用が懸念される薬物や、監獄さながらの格子も外しました。
さらに、庭にはウサギやアヒルといった動物を放し飼いにしました。
患者にそれら動物たちの世話をさせることで自制心を身につけさせ、心の安定を図るという試みを行ったのです。
「アニマルセラピー」の歴史(2)
1867年、ドイツ。
当時は、知的障害やてんかんを持つ人を屋根裏部屋などに閉じ込め、人目に晒さないよう世間から隠していました。
その非人情的な現状を悲観した一部のキリスト教徒が「いかなる人にも才能があり、平等に扱われるべきだ」という理念のもと、「神の家」という施設を設立しました。
そこでは、外部とのコミュニケーションを図る能力を養うため、犬やネコなどの動物を用い、毎日欠かすことなく、それら動物の世話をすることを患者たちに推奨したのです。
また、1942年、ニューヨーク州。
「療養復帰病院」とは、戦争で負傷し、トラウマを抱えた退役軍人のために設立されたものですが、そこでは牛や馬などの家畜の世話や、農場での仕事を手伝わせることによって、戦士の心の傷を癒し、精神の安定を取り戻す活動が行われていました。
それによって、社会復帰に際し、心のバランスが保てるように療養したのです。
この効果は絶大で、精神異常者とまで言われた、ある男性が、1匹の犬と出会い、世話をするうち、数年後には、おかしな言動や虚言癖が軽減し、およそ、精神異常者というレッテルを貼られていたことがウソのように症状は改善した、という報告もされています。