身体障害者補助犬法(1)

アメリカでは既に市民権を獲得している盲導犬、聴導犬ですが、日本ではなかなか行政の対応が追い付かず、盲導犬は早い段階から認可されていたものの聴導犬が正式に認可されたのは、わりと最近のことです。

ある関係団体の調べによると補助犬と呼ばれる訓練犬の数は、平成27年現在で盲導犬が約1010頭 、介助犬が約76頭ということです 。

それに比べ、聴導犬は約50頭・・・日常生活で不自由を感じる聴覚障害者の数が約35万人だそうです。

全ての聴覚障害者が聴導犬を希望するわけではないと思いますが、それでも聴導犬の必要頭数は圧倒的に少なすぎます。

その理由として挙げられる問題は、いくつかあります。

まず第一に聴導犬の存在事態が、あまり知られていないということです。

盲導犬は比較的、目にすることも珍しくはなくなりました。認知度もそれなりです。

でも、聴導犬と聞くと、ほとんどの人が首を傾げてしまうのです。

身体障害者補助犬法(2)

目が見えないということは、歩くこともままならないことですから、誰が考えても危険なのは明らかですよね。

危険という範囲には「外に出て車に轢かれる=死」と関連付けられますから、当然「代理の目=訓練犬(盲導犬)」と連想されるわけです。

しかし「耳が聞こえない=危険=死」と関連付けて考える人は、あまりいないのではないでしょうか?

危険までは関連します。
その後に死とまでは、すぐに思い浮かべないのではありませんか?

聴覚障害者の方が、視覚障害者より軽視されている・・・わけではないのでしょうけれど(汗)聴導犬に正式な認可をしない行政には少なからず、そのような見方もあったのではないのでしょうか?

さらに聴導犬が世の中に広まらない、もう一つの大きな理由。

それは聴導犬を育てる訓練に掛かる費用が、ほとんど実費ということです。

その金額は、なんと70万円~80万円!
決して気軽に出せる金額ではありません。

身体障害者補助犬法が制定されるまで聴導犬は盲導犬と違い、行政の正式な認可はありませんでした。

そのため、扱いはペット同様、駅や施設などにおいても補助犬と認められるはずもなく、公的補助的な制度は完備されていなかったのです。

確かに、視覚障害者のように目が見えないわけではありませんから、目で見て自分で判断も出来ます。

その点だけを言えば、視覚障害者ほど危険は少ないのかもしれません。

しかし、目が見えない人には盲導犬身体が不自由な人には介助犬、同じように耳が不自由な人には聴導犬が必要なのです。

身体障害者補助犬法(3)

平成15年10月。

「補助犬は、障害者の身体の一部であり、それを拒むことは障害者の社会参加を否定することになる」

このような多くの意見を得て、ようやく行政は聴覚犬も盲導犬と同様、正式に補助犬として認可することを決めました。

この制度によって、平成15年10月からは、ホテル、デパート等の公共施設を利用するにあたって、施設の管理者および責任者は原則として、聴導犬を含む、これら訓練を受けた補助犬の利用を拒否することが出来なくなりました。

また、この法律の規定によって聴導犬も公的補助の対象となり、希望者には一定の適性テスト合格と引き換えに無償で貸付、毎年1回~2回のアフターケアや様々な相談にものってもらうことが出来ます。

補助犬の証としては、それぞれの協会や団体が許可、発行しているステッカーが義務付けられます。

ちなみに、協会や団体で許可されているステッカーは白、またはオレンジ色のものが主流です。

この法律改正を機に聴導犬を含む補助犬が、少しづつでも社会に溶け込んでいけることを期待します。

もっともっと補助犬の認知度や制度が充実し、障害を持つ多くの人たちの力になれば、と願います・・・。

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