聴導犬の訓練(1)

聴導犬の訓練とは、どのようなものなのか、その概要を紹介します。

音を聞かせる訓練

聴導犬の訓練を始める、準備のための「初動訓練」になります。

犬の集中時間は、意外に短いです。

特に子犬の場合は、すぐに遊びに結び付けてしまうため、1回で集中できる訓練時間は、だいたい15分ほど。

初めての訓練は、犬にトレーニングの楽しさを教えるための訓練になります。

ゲーム感覚で、犬を飽きさせない工夫をしながら進めていくのがコツです。

あらかじめ録音機器に録音しておいた、覚えさせたい「音」に慣らすことから始めてください。
最初は聞かせるだけで充分です。

あまり急いで、詰め込みすぎないことを心がけてください。

服従訓練

次に、お馴染みの「服従訓練」です。

聴導犬になる犬は盲導犬と異なり、仔犬時代から特別な訓練を行っていないケースが多いです。

ペット犬の場合も、もちろんありますが、保護管理センターから連れてきた犬は特に、社会性を身につけさせるための「服従訓練」を徹底的に教える必要があります。

この「服従訓練」を通して、人との絆と愛情を教えてあげてください。

基本的には人に対して攻撃的にならないことや、「スワレ」「フセ」「マテ」「コイ」などの指示に、的確に反応できる、維持できることがポイントです。

また、指示されたタイミングや場所で排泄できる、引き綱を強く引くことなく落ち着いて歩ける、食べ物や他の動物、音などに過敏に反応しない。

主人の指示に対して常に注意し、集中することができる、指示された場所で大人しく待機できる、などが条件として挙げられます。

聴導動作訓練

あらかじめ教えられた音を聞いたとき、その音源を確認し、主人に知らせ、主人を的確に音源まで誘導する訓練を行います。

主人に教えるべき音を聞いても、何かに夢中になっていて気を取られ、その音を無視したり、他の音や同居動物(多頭飼いしている場合)の動きに過敏に反応するようでは「聴導犬」としては失格です。

共同訓練

既存犬を聴導犬とする場合は、さほど問題はないと思いますが、他から犬を用意した場合、ペアを組む人との相性が合わなければ、その犬を引き渡されることはありません。

協会に聴導犬を希望した場合、約3週間~4週間掛けてペアを組む犬と疑似の共同生活を行います。
※協会には、専用の仮の部屋が設置されていて、一般的な生活に必要な生活用品(目覚まし時計、ベッド、玄関チャイムなど)が用意されています。

協会での疑似生活で犬と人の相性に問題がなく、大きな弊害がないと判断されれば、今度は主人になる人の実際の家で聴導犬として必要な、覚えるべき音や物の配置を確認させます。

定期的な訓練・指導

協会から聴導犬として、主人の家へ貸し出された犬は、定期的な訓練、指導を受けることが義務付けられています。

その中には、実際に生活してみて気付いたことや、追加で犬に覚えさせたい訓練を新たに覚えさせる「追加訓練」や「補充訓練・再訓練」も含まれています。

聴導犬の所有者である主人は、いつでも必要なときに協会に、このような申請を希望することができます。

聴導犬の訓練(2)

聴導犬の仕事は「音を聞く」「確かめる」「主人に知らせる」ことです。

生活に必要な「音」を聞き、音源を確かめ、それを主人に知らせて、その場所まで誘導します。
主人を呼ぶ家族の声や、他人からの呼び掛けにも反応するように訓練します。

ここでは、訓練士が実際に行うケースの一例を元にして聴導犬の訓練の方法を紹介していきます。

聴導犬の訓練は、2人の訓練士と、2本のヒモやおやつを使って行います。

1本は「主人役」となる訓練士が握り、もう1本は犬から見えない所で犬を操る「影」の役を担当します。

また、訓練を行う部屋は、協会などの1室に用意された専用の「仮の住居」で行われます。

この「仮の住居」には、一般的な生活スペースで使われる家具や家電などが設置されています。

部屋にあるものは、ガス代、電話、目覚まし、ファックス、電子レンジ、玄関扉、などなど・・・。

赤ちゃんがいるお宅に貸し出される犬の場合、赤ちゃんの人形などが用意されることもあります。

聴導犬の訓練(3)

協会などで設置されている「仮の住居」には聴導犬が「主人」の元へ貸し出されてから行うであろう「仕事の範囲」を予測して、一般的な生活スタイルに合わせた生活用品が揃えられています。

また、パトカーや救急車などの緊急車両、異常を知らせるスピーカーやマイクから流れるサイレンの音など、外から聞こえる音にも、過敏に反応しすぎないように犬を慣らします。

訓練に使う音は「初動訓練」の段階で、あらかじめ録音機器に録音しておいた音を犬に聞かせて、慣らしておきます。

この「録音した音」には、主人に教えるべき音とは関係ないものも入っています。

例えば、テレビの音や家族ではない誰かの話声、他の動物の鳴き声などです。

どのような音を聞いても犬が慌てず、知らせるべき音を自分で聞き分けて、主人に教えるように訓練します。

通常のペットのように、必要以上にじゃれついたり、鳴き声をあげるようでは聴導犬とは言えません。

訓練で犬に覚えさせる音は、基本的なものだけを教えておき、ペアを組む「主人」が決まれば、それぞれの生活に必要な音と一緒に犬に覚えさせます。

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